2008年11月の保育
−実をつける秋−
今年はいつまでも暖かく、11月になってやっと秋らしい季節を感じるようになりました。日本の四季はすばらしいもので、春には春の、秋には秋の美しさがあります。春はすべてが芽吹くとき、新しい命が芽生えるとき。秋は、それらが実を結ぶときと言えるかもしれません。
春に新入生を迎えた幼稚園も、来年の子どもたちを迎える準備が始まっています。今年、入ってきた子どもたちも少しずつ成長して、その子なりの花を咲かせ、一人一人が違う実をつけていることを感じています。そして、彼らが季節、季節にふさわしい花を咲かせることができるように、実を結ぶことができるように、私たち大人が引き受ける責任というものも改めて考えるこのごろです。私たち、親であったり、教育者が子どもたち一人一人を大切に、それぞれが豊かな実を結ぶことができるように力を尽くしたいと思います。
こんな話を読みました。ある東の国で一人の男が散歩をしていたところ、サソリが池で溺れそうになっています。彼はそのサソリを引き上げ、命を助けたのですが、サソリは彼を噛んでしまいます。何とか命拾いをした彼は、サソリを水に戻しますが、溺れそうなのを見て哀れに思い、また引き上げ、またもや噛まれてしまいます。周りの人は、同じことをしては自分が痛い目にあっている彼を諭します。「もう、そんなことはおやめなさい」。
彼は言いました。「それは、そうでしょう。でも、私は溺れているサソリを見ると、助けてしまうんです。これは私が生まれ持ったもの、それを捨てることはできないでしょう。私の思いを生かすために、サソリをも生かすために、私も学ぶ必要がありますね」。
大切なことは何か。プロセスなのか、あるいは目的とするものなのか。
私たちが子どもたちを大切にしたい、彼らが成長し、その子らしい実を結ぶためにできる限りのことをしたいと思うとき、彼のようにサソリを助けては噛まれ続けるのではなく、一つ一つのできごとから私たち自身が学び、ほんとうに大切なものは何かをいつも見つめていたいと思います。今、真に必要な気づきを神さまが与えてくださるように祈りたいと思います。